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DubLog

     

「昔は良かった」か

下品 純粋な人 追憶

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先週の話になりますが、St. Patrick’s Dayというアイルランド最大の祝日のパレードを観にいきました。

 

その祝日の名前は知っていたけど、日にちがいつなのか、またどんなものなのかを一切知らず、たまたま前日、久しぶりに訪れたフリークラスで友人にパレードに誘われて、その時に先生たちにSt. Parickについても聞きました。 

 

研修中の若い先生が「この国からヘビを追い出した人」と軽んじたので

「そんなことくらいで国を挙げて祝っちゃうの?」

とふざけていたら、愛国心か宗教心、もしくはその両方が強そうな研修役のベテラン先生がむきになってセイントの素晴らしさとか、シンボルの三つ葉のクローバーの意味とかを教えてくれました。

 

軽い説教に近いものがあり、僕と若いあんちゃん先生は目を合わせて苦笑いです。

 

さて、当日のパレードですが、通りにはパレード開始の1時間前くらいから人だかりができています。

ということを確認できたのは我々も1時間前から場所取りのために集合したからです。

 

結果から言うと、パレードそのものは非常に楽しめたので誘ってくれた友人にも感謝ですが、低い気温の中、かつ日陰で、ロケ的にスタート地点からの距離が少しあったため、実際にはパレードの先頭が現れるまで都合2時間待たされ、最後尾までの観覧時間を含めると合計3時間以上は寒空の下で立ちっぱなしの苦痛に耐えることになりました。

 

ちなみに集まった人だかりは、ローカルも地方出身者も外国人もみんな決まってシンボルカラーの緑のものを何かしら身に着けています。

それしか持っていない青いダウンジャケットと、やはりそれしか持っていないブラックジーンズを身に着けて、頑なに緑を拒んでいる風に見えるのは、目視できる限りでは僕くらいのものでした。

 

パレードを待っている間、緑のシャツ、緑のジャケット、緑の帽子、緑のタイツ、と、国旗のもう一色の方、オレンジを軽視しているかのような緑率の高さを誇る群衆を眺めながら、数少ない親友と呼べる僕の友人が、かつてほんの一時だけ「みどり」というあだ名で呼ばれていたことを、閃光のように思い出しました。

小学生の頃の話です。

 

彼が「みどり」と呼ばれていた理由は「みどり」という名前の女の子が好きだったから、というくだらないものではなく、彼がウチに遊びに来た時に

「占いをしてやるから仰向けになって目を閉じて」

と僕に言われて、その間に顔中に緑色のスタンプを押されまくり、それを見た我が兄が友人の名前をど忘れした代わりに「みどり」と呼んだから、というもっとくだらない理由です。

 

今ではイジメにつながるからという理由であだ名を付けること自体を良しとしない風潮になって久しいですが、懐古趣味みたいですみません、僕が小学生だったころのおよそ30年前は愛らしいあだ名がたくさん存在していました。

 

パッと思いつくだけでも

ヘチ、ヒマラヤシーダー、フェラカド、ドバーマン、マラ、平面、横チン、ハナヂ、ブーブー

などがあり、その由来は「まんま」の物から不明の物までバラエティーに富んでいます。

ちなみに由来が鼻血ブーの「ブーブー」と「ハナヂ」は同一人物で、以前にも少しだけ登場した神話の彼のことでもあります。

自然、この上なく不便で堂々としたもの 1 - Dub Log

 

僕は、いじめる側といじめられる側に理解の違いがあった場合、受け手の主張に沿ってやることに賛成なのと同様、ナイスパスかどうかの評価は受け手が決めることに同意できる人間ですが、あえて送り手を主語にして、送り手の趣味趣向のみを基準に言えば、あの時代の率直さは差別用語をいくら隠してもなかなか差別がなくならないヨーロピアンスタイルよりも、思いっきり本人に向かって差別用語を投げつけて傷つける代わりに裏が無い、南米人の湿度の良さに近いものを感じるのです。

 差別を散々受けてきたこちらとしては、どちらがいいと言えるものではないのですが。

 

そんなくだらない、しかし和やかな生活もいい加減終わりになった高校卒業直後、僕は運転免許取得のため、長野の合宿教習所に行くことになりました。

 

そしてそこで知り合った同部屋のみんなとバカ話をしているとき、「今までで聞いた中で一番くだらないあだ名は何か」という発表会的なものがひょうきんな大学生発信で始まりました。

 

その大学生が

「放課後の教室で、好きな女の子のブルマの匂いを嗅いでいるところを同級生に見つかって、以来『クンクン』というあだ名をつけられた友人がいる」

という話をしたときに、若い僕らから笑いを取っていました。

今考えれば、このお題を振ったのが彼だったことを鑑みると、いわゆる鉄板ネタだったのかもしれません。

 

そして僕の番が回ってきたときには、卒業したばかりの高校時代の友人の話を披露しました。

 

高2の時、よくある話ですが、健全な高校生らしく4、5人のツレたちとエロ話に花を咲かせていると、その中で一番のベビーフェイスでエログロからは最も遠かった友人が、話の脈絡とはあまり関係ないタイミングで

「俺、クンニリングス大好き」

と、かましてきました。

 

性行為における女性への愛情表現の一つを「クンニ」ではなくフルネームで呼ぶあたりに行儀の良さと語感の良さを感じて可笑しくなりましたが、その後に続いたジェスチャーで、似合わないくせに頑張ったのでしょう、舌なめずりをしてから音を立てて唾をすすったときに、若い僕らは笑い弾けました。

 

ちなみにその場にいた全員、バリバリの童貞です。

 

後に、進学校のくせに学校に届いた求人票経由で就職する、学年唯一の生徒になる僕は、いわば珍重な存在で、それに恥じることなく授業中も教室の後ろの方でツレたちとカード麻雀などに勤しむ落ちこぼれだったのですが、根は小心者なので、体罰的な教師の授業ではせいぜい小声でお喋りをする程度にとどめています。

 

よって少し席の離れたこのベビーフェイスの彼を呼ぶときには、おっかなびっくりな小声が届かずに、先生にバレない代わりに本人にも気づいてもらえないというジレンマがありました。

 

ところがこの一件の後、僕らは彼を呼ぶとき、彼の真似をして「ジュルルッ」と唾をすすることで彼に認識させることに成功します。

クシャミや咳と一緒で、先生はもちろんのこと、僕ら以外は誰も気にも留めません。

犬笛と似た効果です。

そしてこの「ジュルルッ」と唾をすする「音」を彼のあだ名としました。

 

呼ぶだけで、その後の会話は何もできなかったけど、耳まで真っ赤にして恥じらうベビーフェイスの彼をからかうのが楽しくて、飽きるまでしょっちゅう唾をすすっていました。

彼にとっては「無理をしたら怪我をする」という分かりやすい教訓です。

 

という話をみんなの前で発表したのですが、

「それ、あだ『名』っていうか?」

という至極真っ当な物言いが主催者の大学生から入り、僕の出走はドーピング扱いされて、ボツになりました。

 

結局「どのあだ名が一番くだらなかった?」という「ギブミー」感の強い彼の営業にみんな遭い、いつの間にかのコンテストは言い出しっぺが満足してくれる結果の元、平和裏にお開きとなりました。

 

シンボルカラーの緑に揺れる群衆を眺めながら、またもやしつけの悪い回想をしてしまったのですが、不思議なものでサッカーの時同様、一生懸命な人達の傍らでろくでもないことを考えていると、バチなのか、後で風邪をひきます。

言葉の壁 - Dub Log

 

パレード終了後の帰り道、だいぶ日が長くなった西の空に目を細めながら、その刺激を嫌がったのは、夕日が目にしみたから、とか、郷愁心にかられたから、などではありません。

 

悪いところや疲れているところが痛くなる、という風邪の前兆です。

どうせバチです。