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DubLog

     

シーズン終了につき

サッカー

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 (この奥に消防車がつっかえた例のホームグラウンドがあります。)

 

語学学校に通い出して以来、サッカークラブの平日の練習や試合の開始時間に間に合わないことが増えてきています。

来シーズン以降の身の振り方も考えないといけません。

 

そんな中、先週とうとうシーズン最終節を迎えました。

平日開催だったため、やはりキックオフには間に合わず、間に合わない時はベンチ入りできなかった選手達や他のスタッフと一緒に柵の外からの観戦となります。

最終節とだけあって、平日開催にもかかわらず僕が知る限りの過去最高数の観客たちが柵外から声援を飛ばしていました。

 

試合は、僕の遅刻はわずか5分であったにもかかわらず早速1失点を喫していたらしく、ビハインドからのスタートとなっていました。

 

ファーストチームはすでに首位でシーズンを終了していて、今回は、こちらもやはりすでに首位は決めているリザーブリーグの方の試合だったのですが、有終の美を飾るために念をいれて、数人のファーストチームの選手をスターティングラインナップに紛れ込ませての、若干大人げない手法での一戦となっていました。

 

ということで普段の試合でもしょっちゅう逆転劇を演じているスロースターターの彼らのことだから、たかだか1失点くらい大丈夫だろうと高をくくります。

 

ところが時間が経過するに従って相手の個人技術の高さが浮き彫りになっていき、おそらくは敵も同じことを考えたのか、バリバリの1軍をピッチに立たせていることが彼らのプレーから推測され、その1点のギャップがなかなか埋まりません。

 

そしてそうこうしているうちにお互いの足が止まって間延びする時間帯がやってきました。

プロの試合や日本の高校生、大学生のそれとは違って、セミプロやアマチュアの試合の場合は大体後半15分あたりが間延び開始の時間となります。

 

少しだけ専門的な話になりますが、サッカーの現場で言われる「間延び」とは攻撃の選手から守備の選手までの距離が長くなってしまう状態を意味します。

スタミナ切れが引き起こす現象で、理屈の上ではキーパー以外の全選手が同じペースで持久力を使っていけば同じレベルのスピードダウンが起きて、元々のポジショニングの距離関係が大きく乱れることはなさそうですが、そこやはり人間、前線の選手は攻撃時により多くのエネルギーを使いたがり、守備への切り替え時に後れを取る、逆にディフェンスの選手は守備時の方が無理が効きやすい代わりに攻撃への切り替えの時、押し上げのスピードが緩む、という実際によって、プロ、アマ、発生する時間帯の違いはあるものの、必ずと言っていいほどほとんどの試合で起こる、実に人間らしい理由に起因した現象です。

 

間延びが起こるということはプレースペースが広くなるということですから、守備のプレッシャーがかかりづらくなり、両チームにとって“攻撃有利”な状態になりやすくなります。

カウンターの応酬なども起こりやすく、素人目から見ると楽しみやすい展開にもなり得ます。

 

ただそうなってくると二次的に起こりやすいのが、守備側が犯すファールの乱発です。

実際、両チーム共にたくさんのイエローカードを出された試合展開になりましたが、それに伴って際どい位置からのフリーキックも、与え、与えられていました。

 

そして時間にして後半30分頃のことでした。

その日数回目のフリーキックがペナルティーエリアから3メートル程度外、角度は正面やや左、という、我がチームにとってその試合最大の危機の一つを迎えました。

 

専門的な用語というのは本からもグーグリングからも学びづらいもので、僕はそれらをほとんど全て現場で覚えてきたクチですが、フリーキックに対する壁に、例えば5人の選手が欲しい場合はそのまま素直に

(I want) five in the wall.

と表現するということをロンドンで学びました。

 

ただ、こういう言い回しもあるらしく、うちのキーパーは

Gimme five! (5枚くれ!)

と叫んでいました。

 

僕はロンドンにいた時、セミプロのユース世代をコーチしていたのですが、ロンドンで最初にお世話になったチーム、という義理と感謝の意味を込めて、そことは別のクラブで週一回、ちびっ子たちのコーチを完全ボランティアで行なっていました。

 

技術練習時に使える基本用語をそこでたくさん学びましたが、対チビっ子にしか使えないような言葉も色々と覚えました。

 

一例を挙げれば、ウォーミングアップのダッシュ時に、まずはその場で足踏みをさせたい時には「step in place/on the spot.」でも通じますが、先輩コーチが使っていた言葉は

Start your engine.

だった、とかです。

 

そしてネイティヴコーチがいいプレーをした選手にハイタッチを求めている時に、ハイタッチを"ファイブ"と呼んでいることに気づきました。

おそらくハイファイブを省略したものであると思われます。

 

そして自分にハイタッチをしてほしくて相手に促したい時は、まんま

Gimme five!

と言うことも同時に学びました。

 

今日の現場のものは、あの時のロンドンのそれとはえらく態度と温度の違う「Gimme five」です。

 

借りにあの場に「Gimme five」の訳を“対チビっ子用”のものしか知らない選手がいたとしたら、「うちのキーパー、何であんなに激高してまで欲しがってるんだろう」という微笑ましいすれ違いを拝見出来たのですが、残念ながらもちろんそんなアホは一人もいません。

 

仕方なく僕はキーパーの熱意に負けないように、出来るだけ自分の世界に没頭しながら、彼の指示を頭の中で意訳しました。

集中力を著しく欠いている僕は、こういう時にのみ集中力を発揮します。

 

ハイタッチしてくれよ!

ハイタッチしろよ!

ハイタッチしろって言ってんだろ!

f**kingハイタッチしろよ!

 

f**kingのところはうまく翻訳できませんでしたが、ちなみにダブリンのサッカー関係者たちはギャグのように高い頻度でFワードを使います。

一般的にイギリス人のFワードの仕様頻度は他の国のネイティブスピーカーに比べて高い、と批判の意味も込めて評価されがちですが、ダブリンのサッカー人のそれはイギリス人の使用頻度を余裕で凌駕しています。

 

試合前ミーティングで監督がモチベーティングのために話すときは、大袈裟でなく一文に1f**ck、いや、たまに2f**kくらい入ってるんじゃないかと疑うくらい、彼はf**kばっかりしています。

全くお盛んです。

 

話が逸れました。

 

大マジで“壁5枚”を、ダレかけたチームメイトたちに怒鳴って要求し、同時に空気を締め直した我がチームのキーパー優秀さに反比例するように、「普段言葉で苦しんでるんだからこれくらいの遊びはいいよね、今日はベンチ外でもあるし」と自己エクスキューズをほどこしながら、このように一人で臨時のお小遣いを楽しんでいました。

 

ちなみに試合は終了間際に駄目押しの2失点目を喰らい、嬉しくない空気でのシーズン終了となりました。

 

ところどころふざけていたくせに、やはり終わりの時というのは寂しいものです。

成績が悪くてチームを降格させてしまったシーズンも、反対にリーグ優勝で昇格したシーズンも、今回のようにシーズン途中からの参加で、大した仕事もせず貢献した感覚がほとんどない時も、エンディングというものはやはり別れの匂いに似ていて、好きではありません。

 

何度も住むところや働く場所を変え、たくさんの人たちと別れてきたのに一向にこれに対しての免疫力がつきません。

よって帰路は少しばかり感傷的な思いに囚われながらのバス帰宅となりました。

 

帰宅後、友人とのSNSでのやり取りで、相手に現住地を問われ、現況報告とともに聞かれてもない心境もついでに打ち明けたところ、

「センチメンタル似合わない(笑)」

と一笑されました。

 

何言ってんの、俺ほど感傷的で情にもろくてロマンチックな男、他にいないよ

とも思ったけど、友人の屈託のない笑顔を思い出して、こちらも“つられ一笑”でセンチメンタルを発散しました。

 

よって意識は「次」です。

「次のチーム」とか「次、住むところ」ではなく、この夏をどう楽しむか、です。

子どもが生まれてから一度も会っていないフランスの友人とその子どもに会うついでにUEFA ユーロでも観戦したいなあ、というプランも頭の中で出来上がりましたが、登録しっぱなしの在英日本大使館から「イスラム過激派組織によるラマダン期間中のテロを呼びかける声明に伴う注意喚起」というタイトルでメールが送られてきました。

 

「欧州サッカー選手権のような世界的に注目を集めるイベントについても、テロの標的となる可能性がありますので事前の情報収集などを怠らず十分に注意して下さい」と、他国についても言及がありました。

 

知らぬが花だったこの情報は、そのまま盛り上がった外国訪問に水を差しましたが、やっと来た好天気の季節のアイルランドに既に満足もしていることですし、大らかな気持ちで受け止めてやります。

これが「出不精」を招いているのかもしれませんが、このように、僕は幸福感に関しては非常に燃費がいいタイプの人間であります。

 

この後も、クロアチア人のルームメイトとクロアチア-トルコ戦を観る予定で、すでにワクワクしています。